「もっと故郷のことを!」高田馬場のリトルヤンゴンを代表するお店、ミャンマー少数民族シャン族料理店「ノングインレイ」

ミャンマー少数民族シャン族料理店「ノングインレイ」

看板

早稲田大学や東京富士大学など、多くの大学や専門学校が集まる日本屈指の学生街、高田馬場。多くの人々が行き交う駅前の交差点を渡って1分ほど歩いたビルにシャン民族料理店「ノングインレイ」はある。

お昼時を少し過ぎた14時頃入店。エスニックな雰囲気が漂う中、席の半分程が埋まっていて、大学生と思しき男女が談笑をしながら食事をしていた。 あまりにも楽しそうに話していたので、聞き耳を立てていた小生であったが、彼らの口からは、とにかく「虫」というワードが飛び交っていた。


「虫???」

疑問はこの後すぐに解決することになる。


聞くところによると、今回訪れた「ノングインレイ」は東京メトロのCMやドラマ「孤独のグルメ」の舞台にもなった有名店だそうだ。 その証拠に、壁には多くの著名人のサインや写真が飾られている。


店内

タイ、インドネパール、ベトナムなど、エスニックな料理を普段から好んで食べることの多い小生であるが、シャン族料理というのは全くの未開拓のゾーンである。 恐る恐る卓の端に置かれているメニュー表を開く。


メニュー全体

当たり前ではあるが、ほとんどの料理が初めましての状態。普段日本で生きているとどうしても「エスニック」やら「東南アジア」やら、大まかにカテゴライズしがちだが、こういった食との出会いで文化の違いというものを感じられる。

未知の料理と遭遇した時、何を選ぶべきか考えあぐねてしまいがちだが、小生はこういう時、メニューの左上にある、一番大きな写真の料理を選択すると決めている。


メニュー1

聞き慣れないこの「モヒンガー」という料理に決定。

料理を待つ間、他にどんな料理があるのかとメニュー表に目を通す。 数ページに渡り、麺やスープ、一品料理と様々な料理の写真がある中、最後のページに、先ほどの「虫」という言葉の答えがあった。

メニュー

なるほどと納得してしまった。


もちろん日本にもイナゴの佃煮やはちのこなど、虫を使った料理はあるので決して驚くべきことではないのだが、このシャン民族料理のお店という異国情緒感ぜられる空間で、虫料理という非日常を味わえるからこその楽しみや興奮があるのだろう。

今回は小生一人きりでの来店だったのであえて注文はしなかったが、次は仲間と共に挑戦してみようと思う。


モヒンガー

メニューを見ながら待つこと3分程で着丼。「モヒンガー」と対面を果たす。

見た目はまるで担々麺。

普段慣れ親しんでいる味を想像して、スープを口に運ぶと……それは全くもって違うものだった。 タイ料理ともベトナム料理とも違う、シャン民族の料理と銘打つだけあり、今まで食べたことのない味だった。ただ決して気をてらったものではなく、ネットの口コミなどでも書かれているように、シャン族料理は日本人の舌にマッチするものだと感じた。


コップ
料理と共に出されたコップ。シャン州の州境の市場で仕入れた。

オーナーであるサイミンゾウさんへインタビュー

店内2

食事を終え、オーナーであるサイミンゾウさんにお話を伺った。



菊地 こんにちは。本日はよろしくお願いします。

サイミンゾウさん よろしくお願いします。

菊地 早速なんですが、こちらの「ノングインレイ」さんが立ち上がった経緯やサイミンゾウさんがこちらのお店に携わったきっかけをお聞きして良いでしょうか?

サイミンゾウさん はい。元々このお店は父の親戚が1997年に立ち上げたもので、僕が共同経営者になったのは、2013年からですね。大学まではミャンマーにいたんですが、卒業のタイミングで父からこの店の手伝いのために日本へ行ってみないかという風に言われました。最初は留学生として来日しましたね。学生をしながら、毎日2〜3時間はこのお店を手伝う、そんな毎日でした。

菊地 なるほど。母国から出て日本で生活をすることに抵抗感はなかったんですか?

サイミンゾウさん なかったと言えば嘘になりますが、友人も多く日本に来ていましたし、なにより親戚がこっちにいたのでそこまで抵抗感はなかったです。 日本では差別みたいなものはあまり感じなかったですし、なにより日本は便利なので(笑)

菊地 そうなんですね。僕が入店した時に大学生らしき団体のお客さんがいましたが、高田馬場という土地柄上、やはり早大生のお客さんが多いんですか?

サイミンゾウさん そうですね。やっぱり早稲田の学生は多いです。メニューにあったと思いますが、団体で来て、みんなで虫料理を注文しては楽しそうに食事をしています。

菊地 虫料理ですね。今回は注文しませんでしたが次回仲間と来た時はいただこうと思います!

サイミンゾウさん 是非お願いします(笑)



刺繍
店内にあるミャンマーの刺繍。一つ一つ手作り。


菊地 今現在、コロナ禍で色々な影響があると思いますが、いかがですか?

サイミンゾウさん もちろん影響はありますね。あきらかにコロナ前とはお客さんの数が少ないです。たださっきの早稲田の学生もそうですし、ミャンマーからの留学生も来てくれます。高田馬場の地元の人たちに支えられていると感じます。ただ、今ミャンマーは政治的にも大変なのはご存知だと思いますが、クーデターが起こった時は記者やジャーナリストの人がたくさん来ましたね。

菊地 それは取材のためにいうことですよね?

サイミンゾウさん そうです。やっぱり多くの人はミャンマーという国もそうですし、シャン族のことも知らないんですよね。そんな中で僕らのようなお店は知る入り口のようになっているんだと思います。

菊地 なるほど。僕自身もミャンマーやシャン族のことは今回の取材のために下調べをするまでほとんど知らなかったですし、やはりイメージは政治的な部分なんですよね。

サイミンゾウさん そうだと思います。僕も日本に来るまで日本のことをよく知らなかったですし。だからこそ、もっとシャン族のこと、ミャンマーのこと、僕らの故郷のことを多くの人に知ってほしいと思っています。お店に飾ってあった絵は見ましたか?

菊地 大きな額縁に入っている絵ですよね?拝見しました。

サイミンゾウさん あれはシャン州にあるインレー湖という場所の絵画です。このお店の名前の元になっている場所です。僕の母国で「ノングインレイ」と言います。



ノングインレイ

菊地 そうだったんですね。すごく美しい絵だと思ったら、そういうことだったんですね。

サイミンゾウさん はい。きっと多くの日本の人達はこの場所のことを知らないと思います。治安が良くないイメージばかりが先行していますが、僕らの故郷にはこういった美しい場所も、美味しい料理もあります。

菊地 なるほど。ありがとうございます。最後に、質問させてください。 今後もコロナ禍や故郷の緊張が続いていく可能性がありますが、「ノングインレイ」さんは、どんなお店であり続けたいと思われますか? 是非教えてください。

サイミンゾウさん はい。早稲田の学生さんもたくさん来てくれていますし、逆にミャンマーからの留学生のお客さんもきます。日本人の方でも、ミャンマーに旅行に行ってシャン族料理を食べた方は、懐かしがってお店に来てくれます。知っている人には懐かしさを感じることのできる場所として、まだ知らない方には、僕らの故郷を知ってもらえるような、そんなお店であり続けたいです。 多くの人に、故郷のことをもっと知ってもらいたいと思っています。

菊地 ありがとうございます。今度は仲間を連れて来させていただきます。本日はありがとうございました!

サイミンゾウさん またお願いします。ありがとうございました。



レリーフ
漆加工されたレリーフ。ミャンマーでは漆工芸品が有名だそうだ。


「もっと故郷のことを知ってもらいたい」と語るサイミンゾウさんがオーナーのノングインレイさん。

高田馬場という土地で地元の方々からの支持を受けて24年。

高田馬場駅から徒歩1分という好立地にあるので、是非足を運んでみてはいかがでしょうか!

ノングインレイ
東京都新宿区高田馬場2-19-7 タックイレブンビル 1F
営業時間:11:30~23:30(L.O.23:00)
ランチメニュー(平日のみ) 11:30~14:30(L.O.14:001)
定休日:年中無休
公式サイト:http://nong-inlay.com/

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菊地 史恩
菊地 史恩編集者

北海道出身。1990年10月30日生。 脚本家、演出家。 日本大学芸術学部中退。 扱う題材は児童買春、宗教、アイデンティティ・クライシスなど多岐にわたる。コメディからシリアスに至るまでジャンルに囚われない作風が特徴。